もふもふ不動産のモフです。もふもふしたものをこよなく愛する投資家で、元SONYやキオクシアで先端半導体の研究開発者。登録者25万人のYouTube「もふもふ不動産」を運営しています。投資やテクノロジーで役立つ情報を発信しています!
「ラピダスの株を買いたいんだけど、どこで買えるの?」——最近この質問をよくいただきます。国策半導体企業として連日ニュースになっているので、投資したくなる気持ちはよくわかります。
先に結論を言うと、ラピダスは未上場なので、今は株を買えません(株価も存在しません)。ただし会社と政府は上場(IPO)の目標時期を2031年度と明示していて、2026年に入ってからは「2nmの設計キット(PDK)を顧客に配り始めた」「政府が1,000億円+1,500億円を出資し、さらに1,500億円を要求」「2nmウェハーをTSMCより安く売る」と、上場に向けた材料が次々に出ています。元キオクシアで16年間半導体の研究開発をやっていた僕が、2026年8月時点の最新状況を踏まえて、上場計画・2nmの進捗・株主構成・成功の条件まで解説します。詳しい経歴は研究開発者としての経歴ページをご覧ください。
よくある質問
ラピダスの株は今買えますか?
買えません。ラピダスは未上場企業のため、証券取引所で株を購入する方法は現時点ではなく、株価も存在しません。会社と政府は2031年度の株式上場(IPO)を目標として示しています。
ラピダスの上場はいつですか?
目標は2031年度です。2027年度後半に2nm半導体の量産を開始し、2029年度に営業キャッシュフロー黒字化、2030年度に営業損益黒字化、2031年度に株式上場とフリーキャッシュフロー黒字化を目指すロードマップが示されています。量産や黒字化が遅れれば上場時期も後ろにずれる可能性があります。
ラピダスの2nmはどこまで進んでいますか?
2025年7月に試作ウェハー上で2nm GAAトランジスタの動作を確認。設計キット(PDK 0.5)を先行顧客数社に提供済みで、改良版PDK 0.5プラスを2026年5〜6月に提供する計画。60社以上と協議し約10社にPDKをライセンスする段階で、2026年末に顧客が設計したテストチップの生産を始める計画です。歩留まり(良品率)は非公表で、2027年度後半の量産開始が最大の関門です。
PDKとは何ですか?
PDK(Process Design Kit・プロセス設計キット)は、その工場で作れるトランジスタの特性・配線ルール・設計ツール用ライブラリをまとめたもので、顧客がチップを設計するために必須です。PDKが顧客に渡ることは、ファウンドリーとして受注の入口に立ったことを意味します。
ラピダスに出資している企業はどこですか?
2022年の設立時にトヨタ自動車・NTT・ソニーグループ・ソフトバンク・NEC・デンソー・キオクシア・三菱UFJ銀行の8社が計73億円を出資。2026年2月にはホンダ・富士通など新規24社と既存8社の計32社が1,676億円を出資しました。政府はIPA経由で2026年2月に1,000億円、6月に1,500億円を出資し、さらに1,500億円を2027年度予算で要求中で、筆頭株主となる計画です。
ラピダスはやばい(危ない)のですか?
「危ない」と断じる段階でも「成功確実」と言える段階でもありません。2nm動作確認・PDK提供・顧客60社との協議など前向きな進捗がある一方、歩留まりは非公表で、TSMCとの量産ノウハウの差は大きい。2026年末のテストチップ生産から2027年度後半の量産開始までが本当の試験で、計画どおり進まなければ上場時期は後ろにずれる可能性があります。
ラピダス関連銘柄は買うべきですか?
出資企業の大半は上場企業ですが、各社の業績に占めるラピダスの比重はごく小さく、株価は連動しにくいです。関連銘柄として見るなら、ラピダス向けの売上がその会社の業績をどれだけ動かすか(装置・素材メーカーのほうが影響は大きい)を個別に確認する必要があります。この記事は特定銘柄の推奨ではありません。
結論: ラピダスの株は今は買えない——上場は2031年度目標
ラピダス(Rapidus)は未上場の株式会社です。証券取引所に上場していないので、個人投資家が株を買う方法は現時点ではありません。証券コードも株価チャートも存在せず、「ラピダス 株価」で検索して出てくるのは関連銘柄の話か、誤情報です。
ではいつ買えるようになるのか。ラピダスと政府が示している目標は2031年度の株式上場です。2025年11月に政府が約1兆円の追加支援(2026〜27年度)を決めた際、「量産開始→黒字化→株式上場」という道筋が明確に示されました。日経クロステックなどの報道によると、計画は次のようになっています。
- 2027年度後半: 2nm世代半導体の量産開始
- 2029年度: 営業キャッシュフローの黒字化(2029〜30年度をめどに1.4nm世代も量産化)
- 2030年度: 営業損益の黒字化
- 2031年度: 株式上場(IPO)とフリーキャッシュフローの黒字化
つまり「ラピダス株を買う」チャンスが来るとしても5年ほど先で、しかもこの計画どおりに進んだ場合の話です。半導体の量産立ち上げがどれだけ大変かは後半で書きますが、まずはこの前提を押さえてください。
なお「ラピダスの社員はストックオプションをもらえるのか」という質問も見かけますが、未上場企業の従業員向け株式報酬の内容は公表されていません。一般論として、IPOを目指すスタートアップでは従業員にストックオプションを付与するのが普通なので、上場すれば社員にとって大きなインセンティブになります。ただし外部の個人投資家が未上場のうちに株を手に入れるルートは(出資企業の株主になる以外には)ありません。
ラピダスとは——国策の2nm半導体ファウンドリー
ラピダスは2022年8月に設立された、最先端ロジック半導体の受託製造(ファウンドリー)を目指す会社です。北海道千歳市に工場(IIM-1)を建設し、2025年4月からパイロットラインを稼働。2025年7月には2nm世代のGAAトランジスタの動作確認に成功しています。
「2nmって何がすごいの?」という技術の中身は、以前書いたラピダス2nmトランジスタ解説の記事で詳しく説明しています。GAA構造・EUV露光といった技術的なポイントと「これは登山口に立った段階」という評価を書いているので、技術面はそちらをどうぞ。この記事では「投資対象として見たラピダス」に絞ります。
重要なのは、ラピダスが完全な民間企業ではなく国策企業だという点です。政府の支援額は2027年度までの累計で約2.9兆円にのぼる方針が示されており、さらに情報処理推進機構(IPA)を通じた出資で政府が筆頭株主になる計画です。日本政府が「国運をかけて」進めるプロジェクトと言っていい規模です。
【2026年8月時点】2nmはどこまで進んだか——動作確認・PDK・テストチップ
投資家として一番知りたいのは「計画が予定どおり進んでいるか」です。2025年7月の「2nm動作確認」から1年あまり、2026年に入ってからの進捗を順番に整理します。

① 2nm GAAトランジスタの動作確認(2025年7月)
2024年12月にASMLのEUV露光装置を千歳に搬入し、2025年4月1日に2nm世代のパターン露光・現像に成功。その3ヶ月後の7月10日、試作ウェハー上の2nm GAAトランジスタが動作することを日本で初めて確認し、7月18日に発表しました。IBMが持つ基盤技術を、千歳の自社ラインで「実際に動くトランジスタ」として再現できたことの意味は大きいです。ただしこれは「素子が動いた」段階で、製品として売れるチップができたわけでも、良品率(歩留まり)が見えたわけでもありません。
② PDK(設計キット)の提供開始(2026年3月〜)
ファウンドリーは「工場を貸す」商売なので、顧客が自社のチップを設計するためのPDK(Process Design Kit・プロセス設計キット)を配らないと注文が来ません。PDKは「この工場で作れるトランジスタの特性・配線のルール・設計ツール用のライブラリ」をひとまとめにしたもので、PDKが顧客に渡る=受注の入口に立ったということです。
ラピダスは初期版のPDK 0.5を先行顧客数社にすでに提供済みで、2025年末ごろから顧客の要望を取り込んだ改良版PDK 0.5プラスを2026年5〜6月に提供する計画を示しています(日経クロステック2026年2月19日報道。0.5プラスの提供完了は2026年8月時点で正式発表されていません)。2026年3月の資金調達発表時点では60社以上と協議中・約10社にPDKをライセンス、協議先はHPC・AI・エッジコンピューティングが中心と小池淳義社長が説明しています。設計環境の面でも、2025年12月に発表したAI設計ツール「Raads」に2026年7月にケイデンスのAIエージェントを統合するなど、顧客が設計しやすい環境づくりを急いでいます。
③ 顧客のテストチップ生産(2026年末予定)——次の関門
PDKを受け取った顧客が設計した2nmテストチップを、2026年末にも千歳工場で生産開始する計画です(石丸一成CTO・日経クロステック2026年2月)。複数の顧客の設計を1枚のウェハーに相乗りさせる「シャトルサービス」を2026年末〜2027年初頭に始め、顧客はそのチップを量産評価に使います。PDKも2026年末〜2027年初頭に正式版の1.0へ。つまり2026年後半〜2027年初頭が「顧客が本当に注文するか」を占う最初の実戦です。
周辺の体制も整ってきました。2026年4月には千歳に解析センター(物理解析・電気特性・信頼性評価)と、セイコーエプソン千歳事業所内に後工程の研究開発拠点RCS(Rapidus Chiplet Solutions)を開所。2026年から1.4nm世代の開発もIBMと本格化し、2029年ごろの量産化を目指すと報じられています(第2製造棟IIM-2で1.4nmを作る構想も報道されていますが、会社の正式発表はまだありません)。
④ 歩留まりは非公表——ここが最大の不確実性
一方で、歩留まり(良品率)の数字は一切公表されていません。一般に先端プロセスを量産に移すには歩留まりを6〜7割以上に高める必要があると言われます。僕がキオクシアで量産立ち上げを経験した実感でも、「動作する」から「歩留まりが採算ラインに乗る」までが一番長くて苦しい期間です。投資家が追うべき最重要指標はここで、2026年末のテストチップ生産〜2027年の量産準備の中で、歩留まりに関する発言がどう変わるかを注視すべきです。
上場までのロードマップ——量産2027年度後半→黒字化→IPO

投資家目線で大事なのは「上場までに何が起きるか」の順番です。
まず2027年度後半の2nm量産開始。ここが最大の関門です。トランジスタの動作確認と、歩留まりを確保しながら大量生産することの間には、桁違いの難易度差があります。僕はキオクシアで量産立ち上げを経験しましたが、パイロットラインから量産への移行は本当に地獄のような作業でした。
次に顧客の確保。ファウンドリーは注文をくれる顧客がいないと売上が立ちません。前の章で書いたとおり、PDK提供→テストチップ→量産評価という順番で顧客が「本当に発注するか」が2026年末〜2027年に見えてきます。
そして2029〜30年度の黒字化を経て、2031年度にIPO。逆に言うと、量産と黒字化が計画どおり進まなければ上場は後ろにずれるということです。上場を待つ間は、このマイルストーンが予定どおり達成されるかをニュースで追うのが「ラピダスウォッチ」の正しい方法だと思います。
お金の全体像——政府支援2.9兆円と「株主になる出資」は別物
ラピダスのニュースでは「1兆円」「1,500億円」といった数字が次々に出てきて混乱しがちです。投資家として整理しておきたいのは、「政府支援(補助金・委託費)」と「出資(株主になるお金)」は別物だということです。

政府支援(補助・委託): 2027年度までの累計で約2.9兆円の方針。2nm世代の量産立ち上げに必要な投資規模は約4兆円、1.4nm世代以降はさらに3兆円以上とされ、政府支援で足りない分は民間からの出資・融資で賄う計画です。これは株式ではないので、いくら積んでも政府が「株主」になるわけではありません。
出資(資本金・資本準備金): こちらが株主になるお金です。2026年2月27日に政府(IPA)1,000億円+民間32社1,676億円の計2,676億円を調達。2026年6月5日にはIPAがさらに1,500億円を追加出資し、資本金・資本準備金の合計は4,249億円になりました。そして2026年8月21日、経済産業省が2027年度予算の概算要求にIPA経由の出資金1,500億円を計上する方針が報じられ、実現すれば政府出資は累計4,000億円に達します。
投資家目線でのポイントは2つ。①政府が筆頭株主(民間最大株主より議決権を1%多く持つ設計)になるため、上場後も政府の意向が経営に強く働く「国策企業」であり続けること。②出資が繰り返されているということは、それだけお金を使うフェーズ(赤字)が続くということで、2029年度の営業キャッシュフロー黒字化までは資金調達のニュースが続くと見ておくべきです。
ラピダスの株主は誰か——設立8社+新規24社+政府が筆頭株主へ
未上場企業の株は、出資した企業・機関が持っています。ラピダスの株主構成はこうなっています。

設立時の出資8社(2022年・計73億円): トヨタ自動車・NTT・ソニーグループ・ソフトバンク・NEC・デンソー・キオクシア・三菱UFJ銀行。日本を代表する企業が横並びで出資したことが話題になりました。僕の古巣のキオクシアも入っています。
2026年の追加調達(1,676億円): 既存8社の追加出資に加えて、ホンダ・富士通・キヤノン・京セラ・JX金属・セイコーエプソン・大日本印刷・日本政策投資銀行など新規24社が出資に参加。当初の想定を上回る金額が集まりました。
政府(IPA経由): 2026年2月に1,000億円、6月に1,500億円を出資済みで、さらに1,500億円を要求中。前述のとおり、政府が筆頭株主となる方向です。
ただし現実的な規模感も書いておくと、民間出資の累計は約1,750億円で、支援の主力はあくまで政府の約2.9兆円です。日経クロステックは民間出資について「量産には額が少ない」という指摘も報じており、今後も追加の資金調達が続くとみられます。
「TSMCより安い2nm」——価格戦略を投資家はどう見るか
2026年7月、小池社長は講演で2nmウェハーを1枚300万〜350万円(約1.85万〜2.2万ドル)で提供する考えを示したと報じられました(TrendForce・Electronics Weeklyなど)。TSMCの2nm(N2)は1枚3万ドル前後と噂されているので、およそ1万ドル安い水準です。

投資家としてはこれを両面から見る必要があります。良い面は、後発で実績ゼロのファウンドリーが顧客を取るには価格で勝負するしかなく、合理的な戦略だということ。TSMCの2nmは取り合いで値上がりしており、「安くて速い(短TAT)」を求める顧客は確実に存在します。悪い面は、安売りは利益率を直撃すること。歩留まりがTSMCより低いうちは1枚あたりのコストは高いはずで、「安く売る×歩留まりが低い」の組み合わせでは黒字化が遠のく。2029年度の営業CF黒字化という目標は、価格を下げても利益が出るだけの歩留まりと稼働率を達成できるか、にかかっています。
「ラピダス関連銘柄」という考え方
「ラピダス本体が買えないなら、関連する上場企業を買う」という考え方があります。事実として、上の株主リストにある企業の大半は上場企業です(三菱UFJ銀行は三菱UFJフィナンシャル・グループとして上場。日本政策投資銀行は政府系で未上場)。また、装置や素材でラピダスの工場に関わる企業群もあります。
ただし正直に言うと、出資企業の株価にとってラピダスの影響はごくわずかです。たとえばトヨタの出資額は同社の利益規模から見れば誤差の範囲で、「ラピダスが成功したからトヨタ株が上がる」という関係にはなりにくい。関連銘柄投資をするなら、その会社の本業がラピダス向けの売上でどれだけ変わるか(装置・素材メーカーのほうが影響は大きい)を個別に見る必要があります。ここは銘柄推奨になるので具体名の評価はしませんが、「関連銘柄」という言葉だけで飛びつかないことをおすすめします。
元研究開発者が見る成功の条件とリスク——「ラピダスはやばい?」に答える
「ラピダス やばい」と検索する人が多いようなので、最後に元業界人としての個人的見解をまとめます。結論から言うと、「やばい(危ない)」と断じる段階でも、「成功確実」と言える段階でもなく、2026年末〜2027年が本当の試験です。
ポジティブな材料: 2nmトランジスタの動作確認は本物の成果です。EUV露光装置を日本で初めて稼働させ、パイロットラインまで来た。PDK 0.5を顧客に配り始め(0.5プラスも提供予定)、60社と協議・約10社にライセンスと、「絵に描いた餅」の段階は超えつつあります。解析センターやRCSなど周辺の体制も整い、政府のコミットメント(支援2.9兆円+出資4,000億円規模)も本気です。
リスク: 一番の壁は歩留まりで、数字が非公表なこと自体がリスクです。TSMCやサムスンが何年もかけて積み上げてきた量産ノウハウを、ラピダスは短期間でキャッチアップしなければなりません。そして仮に量産できても、TSMCと同じ土俵で価格・供給力・実績を競うことになり、価格を下げれば利益が削られます。ファウンドリービジネスは「作れること」と「儲かること」の間に深い谷がある——これは前回の記事でも書いたとおりです。2031年度の上場目標も、この谷を越えられた場合のシナリオだと理解しておくべきです。
「日本の半導体復活を応援したい気持ちと、投資判断は分けて考える」——これが僕のスタンスです(個人的見解です)。
まとめ
半導体×投資の記事は他にも書いています。キオクシアの爆益決算の解説や、中国YMTC・中国CXMTなど競合の実力分析もあわせてどうぞ。
YouTube「もふもふ不動産」でも半導体と投資の解説をしています。それでは、また次の記事で!

