不動産投資で成功するうえで最も重要なことの一つに、銀行から融資を受けることがあります。銀行から融資を受けないと、不動産賃貸業を拡大できないからです。そして融資を受けるには担保が必要なため、購入する物件を銀行がどう担保評価するかが融資攻略のカギになります。
すでに保有している物件の担保評価額が残債を上回っていることも重要です。残債のほうが多いと債務超過となり、銀行が次の融資を出しにくくなってしまいます。
本記事では、銀行から融資を受けるときに必要な担保の基礎知識と、銀行がどのように担保を評価するかについて、現役のベテラン銀行員が説明していきます。
不動産の担保ってなに?
担保とは「債務不履行の際に債務の弁済を確保する手段として、あらかじめ債権者に提供しておくもの」——難しい表現だとこうなります。もっとわかりやすく言うと、「お金を返せなかったときのために、貸してくれた人が売り払ってお金を受け取れるように、最初から渡しておくモノ」ということです。
住宅ローンを借りれば自宅は銀行の担保になります。しかし「担保になる」といっても、いきなり銀行に取り上げられるわけではなく、普通に住んで生活できます。そういう意味では「最初から渡しておく」よりも「借金が返せなくなったときには、有無を言わさず取り上げられることを約束する」のほうがイメージしやすいかもしれません。
不動産の担保評価を銀行はどのように行っているか?
銀行が「売り払ってお金を受け取る」ことを前提に、担保になる不動産の価格を決めることを担保評価といいます。もちろん「担保評価が1億円だから、自分は1億円まで借りられる」わけではありません。
不動産投資の融資では、「何にいくら使うのか?」という資金使途で必要な融資金額が決まり、「どうやって返していくか?」という返済財源や、「どれだけ資産を持っているか?」「どれだけ本業の収入があるか?」という属性などを総合的に判断して銀行が審査します。担保は融資を検討する際に銀行の基準で値踏みするものであり、担保評価額を基準に融資額が決まるわけではありません。
担保となる不動産を現地調査
まず、担保となる不動産を銀行が調査する手順から見ていきましょう。担保調査専門の銀行員が現地に出向いて調査します。彼らは不動産調査のノウハウや法律知識も豊富な、いわばその道のプロ。長年の経験から、現地を見れば物件の大まかな評価額から問題点まで即座にイメージできます。
現地調査で最初にやることは「調査の承諾を得る」ことです。売買であれば売主など、不動産所有者の承諾を得られなければ現地調査は絶対にできません。
現地に行かないと評価できないことがある
実際に立ち入らなければわからないことがいくつもあるため、現地調査はとても重要です。地盤がゆるい、土地に傾斜があるなどは、足を踏み入れなければわかりません。「日照」「騒音」「悪臭」も人間が出向かなければわからない事柄です。
「物件の周囲」にも注意が必要です。地図や重要事項説明書だけではわからない、「墓地」「悪臭のする施設」など人が嫌がるものが周囲にあるかもしれません。例えば養豚場などは、相当離れていても風向きや天候で悪臭が届きます。こうしたマイナス要素は不動産取引ではなるべく「触れたくない」部分ですが、あると担保評価が下がってしまう場合があります。
未登記の建物がないかチェックする
建物を作ると登記しなければなりません。そして登記にはお金がかかります。アパートでよくあるのが、住民用の物置やゴミ置き場をあとから作ったケースで、ある程度しっかりした作りのものは登記が必要なのですが、費用面から登記しないオーナーが結構いるのです。
未登記でも、税金さえ払っていればオーナーが罪に問われることはありません。困るのは銀行の担保になる場合です。銀行の担保になると、土地の上の建物はすべて登記させられます。登記しなくてよいのは、基礎のない小さな物置やコンテナハウスのように「登記できない」「登記するほどの規模ではない」ものだけです。
登記が必要なほどしっかりした建物は、大抵アパートの裏側や土地の隅など見つけにくいところにあるため、調査担当は現地調査で必ず建物の裏側をのぞき込んで調べます。担当者の中にはこうした「隠れた未登記物件」を見つけ出すことに喜び(?)を感じる人もいます。
実際の入居率を現地でチェックする
投資物件では当然ながら「入居」が重要な要素です。物件のチラシや営業マンの話を鵜呑みにせず、銀行独自で調査担当者が入居状況を調べます。私も数多くの物件を入居調査しましたが、何を基準に入居と見なすかは銀行それぞれで、一概には言えません。
カーテンを付けたままの空室もあるので、カーテンはあまり当てになりません。例えば「郵便受け」——チラシの投函を防ぐため空室の郵便受けは大抵ガムテープなどで閉じられているので、郵便受けを見れば何部屋空いているのか一目瞭然です!また「電気・ガスのメーター」も、空室と居住中の部屋では回る速度が違います。これらは一般の方が投資物件を自分で見に行くときにも参考になると思います。
もっと確実で精度の高い調査方法もありますが、明かすと偽装につながるため銀行の極秘事項になっております。(繰り返しますが、あくまで合法的な手段です!)
法律上の制限などの調査
道路、用途地域、建築条例、制限事項などを役所で調査します。重要事項説明書にすべて記載してある事柄ですが、担保にするため銀行でも独自に調査担当が出向き、記載に相違点やウソがないか「ウラをとる」のです。
もしその物件が建築基準法に違反していた場合、一般的な銀行は融資できないので注意が必要です。具体的には、建蔽率や容積率の基準を超えている、接道しておらず再建築できない、などの場合です。役所から文句を言われることはなくても、銀行は担保にできません。例えば増築して容積率を超えた場合は、増築箇所を壊して容積率を満たさないと担保にできないのです。
一部の銀行はこうした物件にも融資を出していますが、購入した場合、売却時には一般的な銀行の融資が付かないため売却が難しくなることを考慮しておく必要があります。
担保を評価する
担保評価の方法は2つあります。「積算法」と「収益還元法」です。
積算法による担保評価
担保評価の一般的な手法です。基準となる数値(再調達原価)を決めて、その数値と面積を掛け算=積算するものです。土地・建物それぞれの計算方法は以下のとおりです。
仮に路線価10万円で100㎡の土地に、築11年・100㎡の木造の家があった場合、
- 土地の評価=10万円/㎡×100㎡=1,000万円
- 建物の評価=12万円/㎡×100㎡×(残り11年/22年)=600万円
となり、土地と建物で1,600万円の評価になります。銀行は見積もりなどを見て、法外な単価になっていないかを検証します。
収益還元法による担保評価
アパートなどの投資不動産、特に規模の大きい物件で用いる計算法です。標準的な収益を設定し、その利回りになるように価格を決めます。
この例では、利回り5%になるように物件の価格を決めています(これを還元利回り5%といいます)。還元利回りを何%にするかは、物件の場所・立地・構造によって決まります。
積算法と収益還元法の使い分け
積算法で評価するか収益還元法で評価するかは、銀行によってまちまちです。不動産投資に積極的に融資をする銀行は収益還元法を使っているケースが多く、保守的な銀行は積算価格ベースで評価します。両方のミックスで評価する銀行もあれば、さらに保守的に「積算と収益還元の低いほう」を採用する銀行もあります。

銀行担保評価の利用方法
銀行の担保評価は、一般的に世間の相場より格段に低くなります。これは銀行が金貸しとして保守的だからです。前述のとおり担保は「売り払ってカネにする」性質のもので、担保評価も「売り払う」前提で価格を決めているため、世間一般の相場より低くなるのです。ですから「1億の物件を買うんだから銀行の担保評価も1億近くはあるだろう」という考えはまずあり得ません。
銀行は担保の評価額を客に教えることはまずありません。銀行からすれば審査の手の内を見せるようなものだからです。ただし「アバウトでもいいから、今後の不動産投資の参考にしたいので教えてほしい」と頼んでみると、こっそり教えてくれることもあります。
アバウトな金額でも銀行評価がわかれば、物件購入の際に有益な情報になります。銀行の担保評価は売り払うことを視野に入れた、いわば最低ラインの価格。自分が買おうとしている価格と比べれば、割安なのか割高なのかの参考にできます。
まとめとして~銀行はあなた(申込者)のことを思ってくれている?
融資を審査している銀行員が、もし売買が法外な価格だと思ったら——「業者さんには絶対言わないでくださいね!」と前置きしたうえで、「この土地は高すぎると思います。もう一度よく確認してください」と再考をうながされることがあります。私も実際に何回もあります(もちろん業者に漏れ伝わったことはありません)。
このように銀行は投資物件の売値にまで口を挟んでくることがあります。ただしこれは決して顧客のことが心配なのではありません。①法外な価格の取引だと「なんで気づいたときに止めてくれなかったんだ?」と文句を言われないため、②詐欺やうさんくさい話など、犯罪やトラブルに巻き込まれたくないため——すべては「銀行のため」を考えてのことなのです。
